筋肉はどうやって力を出す?「縮む」だけじゃない筋収縮と凝り・痛みの仕組み

痛み

「筋肉に力を入れると、筋肉が縮む」

これはなんとなくイメージできますよね。

では、力を抜いたとき、筋肉はどうやって「緩む」のでしょうか?

実は筋肉は、縮むときだけでなく、緩むときにもエネルギーを使っています。

そして、筋肉を長時間使い続けると、筋肉の中では血流や代謝にも変化が起こります。

これが筋肉の疲労感や不快感、痛みとどのように関係するのでしょうか。

今回は、筋肉が「縮む→力を出す→緩む」という一連の仕組みから、筋肉の凝りや痛みについて考えてみましょう。


筋肉はどうやって力を出す?

まず、腕に力を入れる場面を想像してください。

「腕を曲げよう」とすると、脳からの指令が神経を通って筋肉に伝わります。

すると筋肉の組織(筋小胞体)からカルシウムイオンが放出されます。

すると筋肉にあるアクチンとミオシンという2種類のタンパク質の繊維

が働き始めます。

ミオシンがカルシウムイオンとくっつき、アクチンを引っ張ることで、筋肉の小さな単位が縮み、最終的に筋肉全体として力が発生します。

イメージとしては、

神経から指令
↓
カルシウムが放出される
↓
アクチンとミオシンが働く
↓
筋肉が力を出す

という流れです。


図1. 筋肉が収縮して力を出す仕組み
自分で図を作成しようとしたのですが絵心がなく、AIでの作成のため文章の内容などややこしくはなっていますが、大まかには間違っていないためこちらを採用しております。

ここで重要なのが「ATP」

筋肉が働くためには、ATP(アデノシン三リン酸)という物質が必要です。

ATPは、簡単に言えば細胞が使うエネルギーのようなものです。

筋肉が力を出すときにもATPが使われます。

しかし、ここで意外なポイントがあります。

ATPは「筋肉を縮めるため」だけに使われるわけではありません。

実は、筋肉が緩むときにもATPが必要なのです。


実は「力を抜く」にもATPが必要?

ここで意外なポイントがあります。

筋肉は、力を出すときだけエネルギーを使うわけではありません。

筋肉が緩むときにも、ATPが必要です。

筋肉が収縮させるために、カルシウムが増えますが、筋肉を緩めるためには、このカルシウムを元の場所に戻さなければなりません。

そこでATPのエネルギーを使ってカルシウムを回収します。さらに、ATPはミオシンをアクチンから離すためにも必要です。

つまり、

ATPは「力を出すため」だけではなく、「力を抜くため」にも必要

なのです。

図2. 筋肉が緩む4ステップ
1. 神経からの「縮んで!」という連絡が止まる 2. ATPを使用してカルシウムイオンを筋小胞体に取り込む 3. ミオシンからカルシウムが離れるとミオシンヘッドが緩みアクチンを手放す 4. 筋肉が元の長さに戻り弛緩する

この仕組みがあるから、私たちは筋肉を

「力を入れる → 力を抜く → また力を入れる」

と繰り返すことができます。


筋肉を使い続けると、なぜ疲れる?

ここからが「筋疲労」の話です。

筋肉が力を出し続けるには、ATPを使い続けなければなりません。

身体はATPを作り続けていますが、強い運動や長時間の筋収縮では、ATPを使うスピードが非常に速くなります。

すると筋肉の中では、さまざまな化学的変化が起こります。

特に重要なのが、

  • 無機リン酸などの代謝物の増加
  • カルシウムを扱う仕組みの変化
  • 筋肉の中のエネルギー供給と消費のバランスの変化

などです。

こうした変化によって、筋肉が同じように刺激されても、以前と同じ力を出しにくくなることがあります。

これが筋疲労です。

つまり筋疲労とは、単純に「ATPがなくなった」という話ではありません。

エネルギーを使い続けることで、筋肉が力を発揮しにくい状態へ変化していく

と考えると分かりやすいでしょう。


では、「筋肉の凝り」はなぜ起こる?

例えば、パソコン作業を長時間しているとします。

肩を少しすくめた状態で作業していると、肩周囲の筋肉は完全に休んでいるわけではありません。

頭や腕を支えるために、比較的小さな力を出し続けています。

このような状態が長く続くと、

持続的な筋収縮
↓
筋肉への負担が続く
↓
筋肉内の血流や代謝環境が変化する
↓
筋肉や周囲の感覚神経への刺激が変化する
↓
「重い」「だるい」「張っている」「凝っている」

といった感覚につながることがあります。

ここで重要なのが血流です。

筋肉が強く収縮すると、筋肉の中を通る血管が圧迫されることがあります。

そのため、持続的な筋収縮では、筋収縮中の血流が制限される場合があります。

もちろんそこまで簡単なものではありませんが、長時間同じ筋肉を使い続けることで、血流や筋肉のエネルギー消費が変化することは、コリや痛みの重要な要素です。

図3. 不良姿勢による筋収縮と血流
この画像では長時間の不良姿勢で作業をしていると、筋肉が持続的に収縮せざるを得なくなります。それによって血流が低下し栄養や酸素が届けられなくなることやいらない物質が溜まることで痛みを感じやすくなるという部分を提示したくchatGPTに作成させています。
文章多いのでイラストでなんとなくイメージを掴んでいただき、キャプションで内容を見ていただければと思います。

「コリ」と「痛み」は同じもの?

ここも大切なポイントです。

「凝っている」と感じることと、「痛い」と感じることは完全に同じではありません。

筋肉を長時間使っていると、

  • 重い
  • だるい
  • 張っている
  • 硬い感じがする
  • 疲れた
  • 痛い

など、さまざまな感覚が生じます。

これらには、筋肉そのものの状態だけではなく、筋肉から脳へ情報を伝える感覚神経も関係しています。

筋肉では、運動によってATP、無機リン酸、水素イオンなどの化学的な変化が起こります。

こうした変化の一部は、筋肉に存在する感覚神経を刺激することがあります。

その結果、

筋肉の内の変化
↓
感覚神経が刺激される
↓
脊髄・脳へ情報が伝わる
↓
「疲れた」「重い」「痛い」などの感覚として認識される

という流れが起こります。

つまり、「筋肉が疲れている」という状態と、「疲れていると感じる」という感覚には、神経系が関係しています。


筋肉の痛みは「血流不足」だけでは説明できない

ここまで読むと、

「結局、血流が悪くなるから痛いのでは?」

と思うかもしれません。

しかし、先に述べたように実際にはそれほど単純ではありません。

筋肉の痛みには、

筋肉への機械的な負荷
+
筋肉内の化学的変化
+
血流の変化
+
感覚神経への刺激
+
痛みを処理する神経系の状態

など、複数の要素が関係すると考えられています。

特に、痛みが長期間続いている場合には、筋肉だけではなく、脊髄や脳を含む神経系の働きも重要になります。

そのため、

「筋肉が硬いから」あるいは「血流が悪いから」

だけで、すべての筋肉痛や慢性的な痛みを説明することはできません。


「乳酸がたまったから痛い」は?

筋肉の疲労について、「乳酸がたまるから筋肉が疲れる」というような説明を聞いたことがあるかもしれません。

しかし、現在では筋疲労を乳酸だけで説明することはできません。

筋疲労には、無機リン酸などの代謝物、エネルギー代謝、神経系など、複数の要因が関係しています。

また、運動した翌日などに出てくる「筋肉痛」も、単純に乳酸が残っているために起こるものではありません。

ここは、「乳酸だけが原因」ではなく、筋肉の中では複数の変化が起こっていると考えていただけますと良いかと思います。


筋肉は「縮む・緩む」を繰り返している

私たちが身体を動かしているとき、筋肉では、

収縮する
↓
力を出す
↓
緩む
↓
また収縮する

というサイクルが繰り返されています。

その一つひとつの動きにATPが関わっています。

そして、筋肉を使い続ければ、エネルギー消費だけでなく、血流、代謝物、カルシウムの働き、感覚神経への刺激などにも変化が起こります。

これらが重なることで、

「疲れた」
「重い」
「凝った」
「痛い」

といった感覚につながることがあります。

※ただ、その程度や感じ方は、筋肉への負荷だけで決まるわけではありません。


まとめ

筋肉は、神経からの指令を受け、カルシウムを介してアクチンとミオシンを働かせることで力を発揮します。

そして縮む時だけでなく筋肉が緩むときにもATPが必要です。

筋肉を長時間使い続けると、ATPの消費だけでなく、筋肉内の代謝物やカルシウムの働き、血流などにも変化が起こります。

こうした変化が筋肉の力を発揮しにくくしたり、感覚神経を刺激したりすることで、筋疲労や「重い・だるい・張る・痛い」といった感覚につながることがあります。

ただし、

「凝り=血流不足」
「痛み=乳酸」
「筋肉が硬い=筋肉そのものが悪い」

と単純に考えることはできません。

筋肉の疲労や凝り、痛みには、筋収縮、血流、代謝、機械的刺激、感覚神経、そして痛みを処理する神経系など、複数の要素が関係しています。

筋肉の仕組みを知ると、「凝っているから、とにかく揉めばいい」という単純な話ではないことも見えてきます。

筋肉は、縮むだけでなく、緩むためにもエネルギーを使いながら、私たちの身体を動かしているのです。

いかがだったでしょうか?
私が学生の時に体の仕組みとして勉強し、面白いと思った内容、そして今でも重要であると感じた内容を記事にいたしました。

コリによる痛みに関してはどのようなことを行なっていけば良いかについては、また他の記事で書かせていただければと思います。

参考文献

  • 小澤 瀞司, 福田 康一郎. 標準生理学 第7版. 医学書院. 2009.
  • Pollak KA, Swenson JD, Vanhaitsma TA, et al. Exogenously applied muscle metabolites synergistically evoke sensations of muscle fatigue and pain in human subjects. Exp Physiol. 2014 Feb;99(2):368-80.

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