痛みがなかなか治らない…なぜ?「破局的思考」と痛みの関係を解説

健康・生活

「痛みがなかなか治らない……」

そんなとき、スマートフォンで痛みについて検索したことはありませんか?

「この痛みは○○が原因です」

「この姿勢を続けると身体が壊れます」

「痛いときに動くと、さらに悪化します」

そんな情報を見つけると、

「やっぱり自分の身体はどんどん悪くなっているのかも……」

と不安になることがあります。

そして、痛みを感じるたびに身体を気にするようになり、動くことまで怖くなってしまう…

実は、このような「痛みに対する考え方」は、痛みや生活に関係しています。

その代表的なものが、「破局的思考(pain catastrophizing)」です。

破局的思考の傾向を簡単にチェック!

あなたは痛みについて、こんなことを考えていませんか?

  • 痛みのことが頭から離れない
  • 「この痛みはいつまで続くのだろう」と何度も考える
  • 「このままもっと悪くなるのでは?」と不安になる
  • 痛みが強いと「身体が壊れているのでは?」と思う
  • 「何をしても良くならない」と感じる
  • 痛みが怖くて、できることまで控えてしまう
  • 「このまま普通の生活ができなくなるのでは?」と心配になる

いくつ当てはまりましたか?

これは医学的な診断テストではありません。

しかし、当てはまる項目が多い場合は、痛みそのものだけでなく、「痛みに対する考え方」にも目を向けてみる価値があります。

破局的思考とは?

破局的思考とは、簡単にいうと、

痛みを必要以上に「危険なもの」「重大なもの」と捉えてしまう考え方

です。

研究では、主に3つの特徴から説明されます。

① 反すう

「痛みについて、何度も繰り返し考えてしまう」ことです。

「痛みのことが頭から離れない」

「いつ治るんだろう」

「また痛くなったらどうしよう」

と、頭の中で痛みについて考え続けてしまいます。

② 無力感

「自分にはどうすることもできない」と感じることです。

「何をしても良くならない」

「この痛みを自分ではコントロールできない」

と感じてしまいます。

② 拡大視

「痛みの意味を、実際以上に大きく捉えてしまうこと」です。

「こんなに痛いということは、身体がかなり壊れているのでは?」

「この痛みは重大な病気のサインなのでは?」

と考えてしまいます。

このような破局的思考を評価する代表的な尺度が、Pain Catastrophizing Scale(PCS)です。

日本語版も作成され、研究や臨床で使用されています。

ただし!「痛い=破局的思考」ではありません!

痛みがあることと、破局的思考があることは同じではありません。

例えば、足をぶつけて痛ければ、

「痛い!」

と思います。

これは当然の反応です。

強い痛みがあれば、

「何か悪いことが起きたのでは?」

と心配することも自然です。

つまり、痛みがあると不安になったり、痛みを気にしたりすること自体は、珍しいことではありません。

問題になる可能性があるのは、そこから、

「この痛みは絶対に悪いものだ」

「このまま一生治らない」

「動いたら身体が壊れる」

「自分には何もできない」

と、痛みを必要以上に脅威として捉える状態が強くなった場合です。

研究では、破局的思考が強い人ほど、痛みの強さや障害、痛みによる生活への影響が大きい傾向が報告されています。

つまり、

「痛みがあるから破局的思考になる」のではなく、
痛みがある状態で破局的思考が強くなると、痛みや生活への影響をさらに大きくする可能性がある

と考えると理解しやすいでしょう。

なぜ、考え方が痛みに関係する?

例えば、腰痛があるとします。

腰を動かして「ズキッ」と痛みました。

ここで、

「痛い」

だけなら、それは身体からの情報です。

しかし、

「腰が壊れたのかもしれない」

「もっと悪くなるかもしれない」

「動かないほうがいい」

と考えると、腰に対する警戒が強くなります。

すると、

痛みを感じる
↓
「危険だ」と考える
↓
不安・恐怖が強くなる
↓
動くことを避ける
↓
活動量が減る
↓
身体機能や生活範囲が低下する
↓
さらに身体や痛みに注意が向く

痛みの悪循環について
fear-avoidance modelを参考に作成しています。
無断使用・コピーなどはおやめください。

という悪循環につながることがあります。

これが、痛みと破局的思考を考えるうえで重要なポイントです。

「痛みに関する情報」も重要!

ここで忘れてはいけないのが、自分がどんな情報を受け取っているかです。

痛みがあると、インターネットやSNSで原因や治し方を調べる人は少なくありません。

しかし、ネット上の情報がすべて正しいとは限りません。

例えば、

「姿勢が悪いから痛い」

「この動きをすると軟骨が削れる、軟骨がすり減っているから痛い」

「痛みがあるなら絶対に動いてはいけない」

といった、非常に断定的な情報を見かけることがあります。

しかし、痛みはそれほど単純ではありません。

実際、腰痛に関するインターネット情報を調べた研究では、治療に関する推奨のうち、ガイドラインと照らして適切と評価されたものは43.28%でした。また急性腰痛では28%、神経根症状がある腰痛に関しては適切と評価されたものは16%のみでした。(2)

つまり、

「ネットに書いてある=医学的に正しい」

とは限らないのです。

こうした情報を繰り返し目にすると、

「やっぱり自分の身体は壊れている」

「動いたら悪化する」

「もっといい病院にいけば悪いところが見つかるはずだ」

と考えてしまい、痛みに対する恐怖が強くなる可能性があります。

だからこそ、痛みについて調べるときには、

「誰が言っているのか?」
「何を、どのような研究を根拠にしているのか?」
「すべての人に当てはまるのか?」

を確認することが大切です。

「痛みを気にするな」という話ではありません💦

ここまで読むと、

「じゃあ、痛みを気にしないようにすればいいの?」

と思うかもしれません。

そうではありません。

痛みには、危ない状態を把握し適切に対処するために重要な意味があります。

大切なのは、痛みそのものと、痛みに対する「解釈」を分けて考えることです。

例えば、

「腰が痛い」

これは事実として感じている症状です。

一方、

「腰が壊れている」

「このまま歩けなくなる」

というのは、その痛みに対する解釈や予測です。

もちろん、強い外傷や進行する麻痺など、医学的な評価が必要な場合もあります。

しかし、

「痛い」=「身体が壊れている」、「画像で悪いところがある」

とは限りません。

「本当にそうだと確認できているのか?」

「今できることは何か?」

と考えてみるだけでも、痛みに対する捉え方を整理するきっかけになります。

痛みがゼロになるまで待つ必要はありません

痛みがあると、

「痛みがなくなるまで動かない」

という選択をしたくなるかもしれません。

しかし、慢性疼痛では、必要以上に活動を避けることが、身体活動や生活範囲の低下につながる場合があります。

そのため、医学的に問題がない範囲で、

「痛みが完全になくなってから動く」のではなく、「今できる範囲から少しずつ活動を取り戻す」

という考え方も重要です。

※もちろん、急激な外傷、発熱を伴う痛み、進行する麻痺や強いしびれなどがある場合は、自己判断で運動を続けるのではなく、医療機関で評価を受ける必要があります。

破局的思考 ≠ 性格 です

「自分はネガティブな性格だから痛みが治らない」

と考える必要もありません。

破局的思考は、痛みの経験の中で変化する可能性があります。

実際、認知行動療法や多面的な治療などによって、破局的思考も改善する可能性が報告されています。(3)

つまり、

破局的思考は「自分の性格だから仕方がない」というものではありません。

痛みに対する考え方を整理することも、痛みへの対処の一つになり得ます。

まとめ

痛みがあると、

「このまま治らないのでは?」

「もっと悪くなるのでは?」

と不安になることがあります。

これは、痛みがある人にとって決して珍しいことではありません。

しかし、そこから痛みを必要以上に危険なものとして捉えたり、痛みについて繰り返し考えたり、「自分にはどうすることもできない」と感じたりする状態が強くなると、それは破局的思考と呼ばれます。

そして研究では、破局的思考が強い人ほど、痛みの強さや障害、生活への影響が大きい傾向が報告されています。

「痛いから身体が壊れている」、「痛いから動いてはいけない」と結論づけるのではなく、

「今、感じている痛み」と「その痛みに対して自分が考えていること」を一度分けてみる。

そして、「これは本当に確認された事実なのか?」、「今の自分にできることは何か?」と考えてみてください。

痛みを無視することや無理にポジティブになる必要はありません。

痛みを正しく理解し、必要以上に恐れず、できることを少しずつ取り戻していく。

それが、長引く痛みと向き合うための大切な一歩になるかもしれません。

いかがだったでしょうか?
そうはいっても痛みがある中でどのように動いていくのかなど気になることはたくさんあるかと思います。他の記事で「アクティビティ・ペーシング」などについても取り上げていきますので今後ともよろしくお願いいたします。

参考文献

1) Shimada S, Doorenbos AZ, Goldstein E, Wi D. A Systematic Review of Pain Catastrophizing and Chronic Musculoskeletal Pain. Pain Manag Nurs. 2026 Feb;27(1):e72-e84.

2)Ferreira G, Traeger AC, Machado G, O’Keeffe M, Maher CG. Credibility, Accuracy, and Comprehensiveness of Internet-Based Information About Low Back Pain: A Systematic Review. J Med Internet Res. 2019 May 7;21(5):e13357.

3) Schütze R, Rees C, Smith A, Slater H, Campbell JM, O’Sullivan P. How Can We Best Reduce Pain Catastrophizing in Adults With Chronic Noncancer Pain? A Systematic Review and Meta-Analysis. J Pain. 2018 Mar;19(3):233-256.

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