痛みには3つの種類がある?侵害受容性疼痛・神経障害性疼痛・痛覚変調性疼痛をわかりやすく解説

健康・生活

「腰が痛いから、腰が悪い」

「膝が痛いから、膝の軟骨がすり減っている」

「神経が痛いから、神経に問題がある」

痛みがあると、このように考えるのは自然なことです。

実際、痛みの原因が組織の傷や炎症にあることは少なくありません。

しかし、すべての痛みを「傷ついた場所」だけで説明できるわけではありません。

そこで現在の痛みの医学では、痛みを考えるときに、

「どこが痛いのか?」だけではなく、
「なぜ痛みが起こっているのか?」

という視点が重要になっています。

その代表的な考え方が、

  • 侵害受容性疼痛
  • 神経障害性疼痛
  • 痛覚変調性疼痛

の3つです。

まず、3つ痛みを簡単に説明します

痛みの種類大まかな説明
侵害受容性疼痛傷や炎症などによる痛み
神経障害性疼痛神経そのものの病変や疾患によって起こる痛み
痛覚変調性疼痛痛みを処理する機能の変化が関係する痛み

そして、もう一つ大切なことがあります。

この3つは、必ずしも「どれか1つ」ではなく複数のメカニズムが重なっていることも多々あります。

では、なぜわざわざ痛みを3つに分けて考える必要があるのでしょうか?

「痛い場所=痛みの原因」とは限らない

例えば、足首を捻挫したとします。

それによって靱帯などの組織が傷つき、炎症が起こります。

すると、その情報が神経を介して脳へ伝えられ、痛みを感じます。

これはよく経験することで視覚的にもイメージしやすい痛みです。

このように、組織の損傷や炎症などによって生じる痛みが「侵害受容性疼痛」です。

骨折、捻挫、手術後の痛み、炎症を伴う関節痛などが代表的な例です。

「痛いところに原因がある」

という考え方が当てはまりやすいタイプです。

「神経そのもの」が傷ついて痛むことも…

例えば、帯状疱疹が治った後も痛みが残ることがあります。

また、神経根の病変(ヘルニアで圧迫されて炎症が生じてたりなど)や糖尿病性神経障害などでも、痛みが生じることがあります。

この場合、問題となっているのは単純な筋肉や関節の炎症だけではありません。

体性感覚神経系そのものの病変や疾患が関係しています。

これが、神経障害性疼痛(neuropathic pain)です。

「焼けるような痛み」

「電気が走るような痛み」

「ビリビリする」

「触れただけでも痛い」

などの症状がみられることがあります。

ただし、「ビリビリする=神経障害性疼痛」と決めつけることはできません。

症状だけではなく、神経系の病変や疾患があるかどうかなどを含めて判断されます。

「組織の傷」でも「神経の病変」でも説明できない痛みがある?

ここからが、痛みの医学で大きく考え方が変わってきた部分です。

例えば、

「検査では大きな異常が見つからない」、「神経の病変だけでは説明できない」

それでも、実際に痛い!

このような痛みは、昔の「組織が傷ついているから痛い」という考え方だけでは十分に説明できませんでした。

そこで研究が進むにつれて、

「痛みを感じる神経の機能が変化することがあるのではないか?」

という考え方が注目されるようになります。

その流れから登場したのが、痛覚変調性疼痛(nociplastic pain)という言葉です。

「痛みを感じる仕組み」が変化する?

痛覚変調性疼痛をものすごく簡単に表現すると、

「痛みを処理する仕組みに変化が生じている状態」

と考えるとイメージしやすいでしょう。

例えば、本来ならそれほど強い痛みにならない刺激でも、強い痛みとして感じたり、痛みが広い範囲に続いたりすることがあります。

ただし、ここには重要な注意点があります。

「画像に異常がない、原因が分からない痛み=全部、痛覚変調性疼痛」ではありません。

痛覚変調性疼痛には、一定の診断基準や臨床的な判断が必要です。

このあたりは少し複雑なので、詳しくは別の記事で解説します。

そもそも、なぜ「3種類」に分けるようになったの?

ここまで読んで、

「最初から3種類に分ければよかったのでは?」

と思うかもしれません。

実は、そう簡単な話ではありません。

痛みの医学では長い間、「組織の損傷」と「痛み」の関係が重要視されてきました。

もちろん現在でも、これは非常に重要です。

しかし研究が進むにつれて、

「組織の状態だけでは、患者さんが感じている痛みを説明できないことがある」

ことが分かってきました。

さらに、神経そのものに病変や疾患があることで生じる痛みについても研究が進み、「神経障害性疼痛」という概念が整理されていきました。

それでも、それらだけでは説明しにくい痛みが残ります。

そこで、

組織の損傷・炎症 → 侵害受容性疼痛

体性感覚神経系の病変・疾患 → 神経障害性疼痛

痛覚処理の変化 → 痛覚変調性疼痛

というように、痛みが生じる仕組みを考える枠組みが整えられていきました。

特に「nociplastic pain」という用語は2016年に提案され、のちに国際疼痛学会(IASP)が新しい疼痛カテゴリーとして採用しています。

つまり、痛みを「傷の大きさ」だけで考えるのではなく、「痛みが生じる仕組み」も考える方向へ、医学的な考え方が広がってきたということです。

「痛み=体が壊れているサイン」ではない

ここは、この記事で一番伝えたいポイントです。

痛みは、身体にとって危ない状態を知らせる重要な警報装置のようなものです。

ですが、痛みの強さ=組織の損傷の大きさとは限りません。

例えば、同じ程度の組織損傷があっても、感じる痛みには個人差があります。

また、組織の状態が改善していても痛みが続くことがあります。

これは「痛みが嘘」という意味ではありません。

痛みは実際に感じている体験であり、その背景にある仕組みを考える必要があるということです。

IASPも現在の痛みの定義において、痛みは単純な神経活動そのものではなく、感覚的・情動的な体験であることを示しています。

3つを知ると、痛みの見方が変わる

ここまでの内容をまとめると、

侵害受容性疼痛
→ 組織の損傷や炎症などが関係する

神経障害性疼痛
→ 神経系の病変や疾患が関係する

痛覚変調性疼痛
→ 痛覚処理の変化が関係する

という違いがあります。

ただし、実際の患者さんでは、これらがきれいに分かれているとは限りません。

例えば慢性疼痛では、組織からの侵害受容性入力に加えて、神経障害性疼痛や痛覚変調性疼痛の要素が複雑に関わっている場合があります。

だからこそ、

「この痛みはどこが悪いのか?」

だけではなく、

「この痛みには、どのような仕組みが関係しているのか?」

と考えることが重要なのです。

そして、この中でも特に「痛みが長引く」「痛みの範囲が広がる」「刺激に対して痛みを感じやすくなる」といった現象を理解するうえで重要なのが、痛覚変調性疼痛です。

いかがだったでしょうか?
痛覚変調性疼痛があまり知られておらず、整体の方だけでなく医療者でも動画サイトやSNSで「私の徒手療法で治る!」といった内容が配信されている状況をみたため3つの痛みの分類をお伝えしました。

もちろん痛みの分類が3つあるということは治療方法も全く違うということになります。
そこで重要なのが痛みをしっかり評価、分類し、それに合わせた治療を行う必要があります。

長くなりましたが、他の記事で細かい説明や治療についても記載できればと考えています。
最後まで読んでいただきありがとうございます。

参考文献

  • 慢性疼痛診療ガイドライン作成ワーキンググループ.慢性疼痛診療ガイドライン.2021.
    内容を読まれたい方はこちらから→https://minds.jcqhc.or.jp/summary/c00664/
  • K, Górnicki T, Kałka D, Szuster E, Biernikiewicz M, Markuszewski L, Sobieszczańska M. What Do We Know about Nociplastic Pain? Healthcare (Basel). 2023 Jun 17;11(12):1794.

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