「仕事ではほとんど一日中座っている」
「家に帰ってからもテレビやスマートフォンを見ながら座っている」
そんな生活をしていませんか?
座っていること自体は悪いことではありません。しかし、長時間の座位が毎日続くことは、健康との関連が報告されています。
さらに最近では、単に「運動する時間を作る」だけではなく、座っている時間そのものを途中で中断する「Sitting Break(シッティング・ブレイク)」にも注目されています。
この記事では、長時間座ることと寿命・痛みの関係、そしてその対策を解説します。
結論:座ることより「座り続けること」に注意
まず大切なのは、
「座ってはいけない」という話ではありません。
問題になるのは、長時間にわたって座り続ける生活です。
現在までの研究では、座位時間が長い人ほど全死亡リスクが高いことが報告されています。また、座位時間と腰痛などの筋骨格系の痛みとの関連も研究されています。
ただし、これらの研究の多くは「座ることが直接寿命を縮める」「座ることが直接腰痛を起こす」と証明したものではありません。
そのため、
「座る=悪」ではなく、「長時間座り続ける生活を減らす」
と考えることが重要です。
座っている時間が長い人ほど、死亡リスクが高い?
座位時間と健康については、これまで数多くの研究が行われています。
2019年のシステマティックレビュー・メタ解析では、加速度計を使って身体活動量と座位時間を測定した8本の研究、約3万6千人を対象に分析が行われました。
その結果、座位時間が長い人ほど全死亡リスクが高い傾向が確認されました。
特に、座位時間が最も長いグループでは、最も短いグループと比較して死亡リスクが高くなっていました。
一方で、身体活動量が多い人では、この関連が弱くなることも示されています。(1)
ここで注意したいのは、この研究が「座っている=死亡の原因」ではないことです。
例えば、座っている時間が長い人は、身体活動量が少ない、生活習慣が異なるなど、他の要因も持っている可能性があります。
したがって、
「座っている時間が長い=寿命が短くなる」と単純に考えるのではなく、「長時間の座位と死亡リスクには関連が報告されている」
と理解するのが適切です。
座りすぎると腰痛になりやすい?
では、座っている時間と「痛み」にはどのような関係があるのでしょうか。
2021年に発表されたシステマティックレビューでは、座位行動と筋骨格系の痛みとの関係が調べられました。
その結果、座位時間やコンピューター使用時間と、首・肩・腰などの痛みとの関連が報告されています。
因果関係というのは強くは言えませんが、座位時間を減らすことで痛みの改善も見られた(2)とのことですので
「長時間座る人は腰痛になりやすい可能性があり、座る時間を減らすことで痛みも減らせる可能性がある」
とは言えます。
ただし、腰痛には、身体活動量、筋力、睡眠、心理社会的要因、仕事の内容など、さまざまな要因が関係します。
そのため「腰痛にならないために長時間正しい姿勢で座る」という考え方よりも、同じ姿勢を長時間続けないことが重要になります。
「正しい姿勢」でも、ずっと座っていたらいいの?
ここは意外に重要なポイントです。
よく動画などでは「姿勢が悪いから痛くなる」と言われたり、
「正しい姿勢で座るのが良い」と思われています。
しかし、どれだけ良い姿勢でも、同じ姿勢を長時間続ければ身体への負担は偏ります。
大切なのは、
「完璧な姿勢を維持すること」より「姿勢を変えること」です。
※完璧な姿勢というのも実は判断が難しいことも報告されていますが、また別の記事で記載できればと思います。
座っている状態から、少し立つ、お茶を入れるために歩く、少しストレッチをする。
このように身体の状態をこまめに変えることが、長時間の座位を避ける一つの方法になります。
「Sitting Break」という考え方
そこで注目されているのが、
Sitting Break(シッティング・ブレイク)です。
これは「長時間座り続けるのではなく、途中で座位を中断すること」です。
例えば、
- 30~60分に一度立ち上がる
- 少し歩く
- トイレに行く
- 水分を取りに行く
- 軽くストレッチする
- 階段を少し使う
などが考えられます。
重要なのは、「運動をするために長い時間を確保する」というより、
日常生活の中で、座りっぱなしの時間を分断する
という発想です。
Sitting Breakで痛みは減る?
ここは現在の研究を見ても、まだ慎重に考える必要があります。
2026年に発表されたシステマティックレビューでは、長時間の座位を短時間の運動で中断したランダム化比較試験6研究、計210人が検討されました。
ストレッチ、歩行、階段昇降、軽い筋力運動など、さまざまな方法が使われています。
6研究のうち4研究では、座り続ける場合と比較して、首・肩・腰などの筋骨格系の不快感が改善しました。(3)
※ただしこの研究はストレッチ、歩行、階段昇降、筋肉の収縮などのを2〜10分行なっています。
一方で、2024年に発表されたランダム化比較試験では、30分ごとに3分間歩いて座位を中断する方法を検討しましたが、健康な成人が夜勤をしていることを想定した環境では、座りっぱなしの場合と比較して痛みを明確に改善する効果は確認されませんでした。(4)
つまり現時点では、
「Sitting Breakをすれば痛みが必ず減る」とは言えません。
しかし、一方で、
「長時間座り続けるより、途中で身体を動かすことが筋骨格系の不快感を減らす可能性がある」
という研究結果が出てきていると考えると良いかと思われます。
では、どのくらいの頻度で座るのを中断すればいい?
「30分ごとに必ず立たなければいけない」という明確な基準があるわけではありません。
研究ではさまざまな時間間隔や運動方法が使われています。
そのため、まずは無理なく、
「長時間座り続けない」
ことを目標にするとよいでしょう。
例えば、
仕事中は30~60分に一度立つ
というルールを作る方法があります。
立ったついでに少し歩けば、さらに身体を動かすことができます。
大切なのは、何分に1回立たないといけないというより
「座りっぱなしだった時間を、一度リセットする」
くらいの感覚で継続することが重要です。
運動していれば、座りっぱなしでも大丈夫?
ここもよくある疑問です。
例えば、
「毎日30分ウォーキングしているから、仕事中は8時間座っていても問題ない」
と考える人もいるかもしれません。
しかし、現在の研究からは、身体活動と座位時間は別々に考える必要があります。
身体活動量が多い人では、座位時間と死亡リスクとの関連が弱くなることが報告されています。(1)
だからといって、「運動していれば長時間座っていても問題ない」とまでは言えません。
理想は、
①座り続ける時間を減らす
②途中でSitting Breakを入れる
③日常的に身体を動かす
という3つを組み合わせることです。
今日からできる「座りすぎ対策」
まずは、
① 仕事中に定期的に立つ
ポモドーロタイマーやアラームなどを使用し、パソコン作業の合間に立って、少し歩きましょう。
② 電話や会議の一部を立って行う
可能な環境であれば、立った状態で行うだけでも座位時間を減らせます。
③ 水分補給やトイレを「身体を動かすきっかけ」にする
わざわざ運動の時間を作らなくても、日常生活の中で動く機会を増やせます。
④ 座ったままになりやすい時間を把握する
「仕事中」「通勤中」「テレビを見る時間」など、自分が長時間座っている場面を一つ見つけてみましょう。
まとめ
長時間の座位は、全死亡リスクや筋骨格系の痛みとの関連が研究されています。
ただし、
「座ることそのものが寿命を縮める」
「座ることが腰痛の原因になる」
と単純に考えることはできません。
重要なのは、
「座らないこと」ではなく「座り続けないこと」
です。
運動する時間を確保することも大切ですが、それだけではなく、普段の生活の中で長時間の座位を減らしていきましょう。
まずは、
「30~60分に一度、立って少し身体を動かす」
くらいから始めてみるのも一つの方法です。
完璧に実践する必要はありません。
座りっぱなしの時間を、少しずつ減らす。
それが、長く身体を動かして生活するための一歩になるかもしれません。
いかがだったでしょうか?
座ってする作業が多い近年では学生でも体の不快感や痛みを訴える方が増えています。
少しでも楽になってもらうための方法としてsitting breakについて記事にさせていただきました。
次回もまた皆様のタメになるような記事を考えますのでぜひご一読くださいね!
参考文献
1) Ekelund U, Tarp J, Steene-Johannessen J, et al. Dose-response associations between accelerometry measured physical activity and sedentary time and all cause mortality: systematic review and harmonised meta-analysis. BMJ. 2019 Aug 21;366:l4570.
2) Dzakpasu FQS, Carver A, Brakenridge CJ, et al. Musculoskeletal pain and sedentary behaviour in occupational and non-occupational settings: a systematic review with meta-analysis. Int J Behav Nutr Phys Act. 2021 Dec 13;18(1):159.
3) Zeng J, Lei D, Gao M, et al. Can exercise snacks alleviate musculoskeletal discomfort in prolonged sitting? A systematic review of randomized controlled trials. BMC Public Health. 2026 May 2;26(1):1936.
4) Craige EA, Owen PJ, Gupta CC, et al. The impact of breaking up sitting during simulated nightshifts on musculoskeletal pain: A randomised controlled trial. Sleep Med. 2024 Oct;122:198-207.
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